現地レポート <From タイ/バンコク>

■タイの富裕層マーケットを狙う日本産高級フルーツ
−タイ・バンコクの高級デパートの果物売り場−

タイはマンゴー、マンゴスチン、ドリアンなど、日本で購入すると高価な果物だけでなく、安くて豊富な果物を1年中楽しむことができるフルーツ王国だ。そんなタイの首都バンコクでは、現地でハイソと呼ばれるタイ人富裕層の間で、日本産の高級フルーツが売れており、日本にとって主要輸出先の1つとなっている。あまり知られていないが、日本にとってタイは、アメリカ、香港、中国、韓国、台湾に次ぐ第6位の果物輸出市場である。品目では、りんごが通年供給可能という点、また日本の果物として浸透していることから、年間でみると、タイでは一番販売額が多い。しかし、シーズンでみると、ももといちごの反応が良く、それぞれ時期的には売上げの7〜8割を占める。タイでは、ももは中国産、いちごは北タイ産が流通しているが、それらと比較し品種改良が進んだ日本産は味や大きさなどの品質が全く違う点が評価されている。

こうした状況のなか、近年、伊勢丹バンコク店などのデパートで、日本産フルーツのさらなる消費拡大を目指して、販促イベントが度々行なわれている。そして、会場には在タイ日本人だけでなく、多くのタイ人の来客がある。出展のため訪タイした複数の企業は香港などでも同様のフェアに出展しているが「バンコクでは比較的、大量に買う人が多かった」「売値が高いかと思っていたが、予想以上に売れた」という声があがっている。

−りんご(陸奥)が1個約500円で販売−

日本の果物は、富裕層をターゲットにしているだけに、タイの地元の果物に比べると数倍の値段がする。日本の高級品をそのまま輸入、販売すると、日本の小売価格の3倍以上の価格になるためだ。例えば、福岡のイチゴ「あまおう」の場合、1粒当たりおよそ100バーツ、日本円でなんと300円近くもするのだ。ただし、2007年に発効した「日タイ経済連携協定」(JTEPA)が追い風となり、現在、段階的に日本の農産物への関税が下がっており、タイでの消費拡大を後押ししている。例えば、メロンやぶどうといった果物に関しては、2009年に随時0%に下げていき、みかんやいちご、チェリーについては、2012年に0%に下がる方向である。JTEPAが十分な成果を得られれば、日本産の果物の値段も下がり、現在の販売価格と比較して最高40%は安くなるであろうとジェトロの上層部も期待を寄せている。輸入税率が下がってからは、日本産の果物のタイへの輸入は果物の種類にもよるが、平均して30〜50%の成長率が予測されている。また、日本はJTEPAの特権のみに頼ってはおらず、ジェトロ・バンコクセンターにマーケティングの計画、日本産果物の販売推進を委任している。

日本の日本産果物の推進計画は国レベル、県レベル、民間レベルの3つのレベルで実施されている。国レベルでは、アジア・フルーツ・ロジスティカにおけるジャパン・パビリオン同様の形態でフェアを実施し、県レベルでは「広島&岩手 日本フードフェア」のように、果物に強みを持つ各県が果物を物産展などで披露している。一方で、民間レベルでは各社独自の市場計画を持っている。

例えば、2006年12月に日本産の高級フルーツを販売する専門店をバンコク中心部のショッピングモール内にオープンし順調に売り上げを伸ばしている、北陸のフルーツ専門店大手のフルーツむらはた(本社:金沢市)は、自社の果物のための特別な市場形成を狙って、独自サービスに重点を置いている。具体的には、店内にフルーツパーラーを併設し、店内にある様々な果物を使ったパフェを作って出している。見た目が美しく、タイ人にとって珍しいフルーツパフェなどのデザートの店内サービスを提供していくことで、日本から輸入してきた様々な新鮮な果物を販売できる。パーラーは比較的低価格で日本のフルーツを知ってもらう「試食」の意味とともに、店頭品の需給調節の役目を担っているのだ。高価な日本産フルーツだけを扱う業態はタイで初めてで、福島産モモや栃木産イチゴなどを主力に30余の果物を成田空港から空輸し、店頭販売のほか高級ホテルなどに卸している。贈答品用も人気で売上高も伸びており、それだけで年間数千万円の規模だ。むらはた社が海外進出先として、タイを選んだのは東南アジアの中心で治安が安定している点と、社長が学生時代にタイを旅行して地理や風土に詳しく、また東京でタイ富裕層へのフルーツ販売の経験から、現地でのビジネス機会があると判断したためだという。タイは予想以上に現地富裕層の購買力は大きく「良いものなら価格を気にせず購入する階層」が確実に存在するというのが、むらはた社の実感だという。当初はタイの日系企業の贈答需要が相当の割合を占めるとみていたが、結果的には9割近くがタイ人の顧客であった。

タイに限らず、日本の農産物は海外では「おいしい」とともに「健康的」「安全・安心」である点で高く評価されている。富裕層にターゲットを絞る場合は問題が無いだろうが、市場が拡大するなかで、価格競争を指向する業者が増加し、それに伴う品質低下と日本産全体のプレミアム低下といった事態が起きないようにすることが一番大切ではないかと思われる。量的な拡大よりは、官民あげて高品質な農産物輸出マーケットを育成していく姿勢が必要であろう。バンコクでも多くの日本食、日本食材を手に入れることができるが、これからは、こだわりの一品も求められるようになると思われる。

 
2009年5月アジアビジネスサポートデスク海外提携先
東京デベロップメントコンサルタント株式会社(TDC)

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